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*つるこけももの汁 [#e9343398]

**プロット・アゲンスト・ロシア[#n7b7dc17]

***ペトログラード 始まりの酒場 [#p1014ff3]

&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);

ロマノフの血筋と、今や町雀の噂するところであった少女は、かつてサヴィンコフや戦闘団が屯していた酒場にお忍びで来ていた。
しかし、そこにもはやドイツのビールも、フランスのワインも無い。あるのはロシアのコニャックと、日本酒と、アメリカのあまり美味とは言えないビールだけだ。
戦争はここから瀟洒な空気を奪い、サヴィンコフを礼賛するプロパガンダ、「愛国主義の聖地」としての、いわばロシアに対する陰謀の始まりを祝する場となっていた。

&ref(MRUS Yusupov.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);アナスタシア、ここはもう良いだろう。さぁ行こう

アナスタシアの隣でコニャックを呷ったユスポフは、およそ男のものとは思えぬ細面に神経質なしわを浮かべ、アナスタシアに促していた。
彼の宮殿では、既にカデットや英国のスパイが議論を交わし、いかにサヴィンコフ体制に匕首を突き付けるか昏い楽しみに興じているだろう。だがユスポフはそれに参加する気になれなかった。
彼は既に、ラスプーチン暗殺を成し遂げ、そしてその結果として、父も母も弟も、姉も妹も亡くした皇女の隣に侍っていた。

&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);ねえ、おじ様
&ref(MRUS Yusupov.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);何だい
&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);私がツァーリの娘だと、貴方は確かに言ったわね

ユスポフが黙って肯いた。瞳は揺らいでいて、白目は赤みを帯びている。

&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);検査でも、私の血筋がそうだと出ていたわ。オカルト話のように思えたけど、真実なのでしょう?
&ref(MRUS Yusupov.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);そうだよ。君はツァーリの娘だ……正統なロシアの支配者だ

ユスポフの震えた小声に、アナスタシアはゆっくりと肯いた。彼女の瞳は虚空を彷徨い、光なくどこか遠くを見つめている様子である。

&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);始めは私も、そう信じようとしたの。誰も彼もが私を見て、顔を綻ばせたり掌にキスをする……映画のような話で、夢と思えた出来事が現実になるんですもの
&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);でも、心のどこかでそれを信じられない私が居るのよ。おじ様。検査がそう言っていて、皆がそう信じていても。私にはここでお転婆に勤めていた事の方が真実に思えるのだわ
&ref(MRUS Yusupov.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);そんな事を言ってはいけないよ。天国のお父様が悲しむ
&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);ねぇおじ様。あの酒場の親父さんね、私にはけっこう優しくしてくれたのよ。入り立ての頃にこっそりハムと白パンをくれてね。服も新調したものをくれた。ぜんぶ「親方」のものって言って、自分はそれを配っただけって
&ref(MRUS Yusupov.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);親方……サヴィンコフだな
&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);あの男はね。白馬に跨って、血に染まった地下室から私を助け出してくれたのよ。そして、酒場を紹介してくれて、どこから手に入れたか分からない金品も銀行に入れてくれたわ
&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);たまには外へ連れ出してくれて、白樺やタイガのある辺境まで見せてくれた

アナスタシアは顔を赤らめたりして、昔の思い出を少しずつ語り掛けた。しかし彼女は、酒場に黒装束の女が入ると、途端に蒼ざめた顔でこう言うのだ。

&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);黒い色は嫌い
&ref(MRUS Yusupov.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);なぜ?
&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);サヴィンコフの隣に居る、あの女を思い出すのよ。クレムリンで倒れた後、私を押し退けるようにして、執務室を独占した女が
&ref(MRUS Yusupov.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);(エマ・デーレンタールか……)アナスタシア。君の居る場所はそんなところじゃない
&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);私の居る場所は、私が決めるわ

強い調子で言ってのけたアナスタシアは、怯んだユスポフの目をじっと見た。

&ref(アナスタシア.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);もしあそこに居られないなら……全部を壊して、何もかも無かった事にしたい

ユスポフはゆっくりと肯き、アナスタシアに手を差し伸べた。彼の宮殿では、ごろ皇女生存の真意を確かめに、カデット地下組織の重役たちが押し寄せている頃だった。

**静かなライン [#l57f2413]

陰謀は、ロシア軍とイギリス軍の衝突あってこそ推進する事が出来た。

http://art1.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/257850527.v1536790620.png

再建が進んでいたヴィルヘルムスハーフェンに砲弾を叩き込んだイギリス軍は、直ちにエルフルトまで進軍してこれを制圧した。
沿岸警備隊は配置されていたが、その中で奇妙な食人現象が発生すると部隊は四散し、防衛線に出来た空白を夜通し英特殊コマンドが突進する状況であった。

http://art1.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/257850525_624.v1536790608.png

マルコフとヴラーンゲリは、ハノーファーまで誘き寄せた英軍部隊をツルクルの機甲軍に寸断させた。ツルクルは、ヴィルヘルムスハーフェンへ前進した後、戦車によって荒廃していた市街地に突入。
ところがツルクルは、さしたる抵抗も無いまま、およそ訓練されたとも思えない現地の徴発部隊が、仲間の死骸を食らって戦闘を続けている様に愕然とした。

http://art5.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/257850526.v1536790614.png

エルフルトにおいても同様の抵抗に遭遇したロシア軍は、徴発されたはずの部隊と数日間激戦を繰り広げていた。彼らは一様に、足を吹き飛ばされたら膝で這い、指如きの損傷では健常者と変わらぬ戦闘を続けた。
幾人かの遺体を収容したツルクルは、マルコフとヴラーンゲリに情勢を報告。

&ref(ツルクル.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);恐らく、次の攻勢はもっと激しく、より流血を強いるものになると思われます

とも追記した。

http://art1.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/257850528.v1536790626.png

ツルクルの話を証明するような事態が、ユトランド半島でも起きた。コペンハーゲンに籠城していたスウェーデン((彼らの国ではサンディカリストが権力を握った))軍が、英特殊コマンドに率いられ最後の攻勢を敢行。
スウェーデン王室の旗を掲げた軍勢がロシア軍T-34部隊に突っ込み、鉄量によって粉砕された。ロシア軍はそのままコペンハーゲンを凱旋した後、先頭に立っていた兵士が嘔吐するほど残忍な光景を見た。
国王グスタフ五世が、妻であるヴィクトリア・アヴ・バーデンを文字通り捕食していたのだ。

http://art1.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/257850621.v1536793332.png
http://art1.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/257850624.v1536793649.png

黙示録のような事態を報道できないロシア当局は、ひとまず英特殊コマンドにより国王が「危篤状態」にあると公表し、スカンジナビア全土に成立した新政府にはヴィドクン・クヴィスリングを長に据えた。
クヴィスリングは、王室が軒並み崩壊したスカンジナビアを「白人主義」「反共」「強力な指導体制による経済復活」というスローガンで席巻し、以後数十年に渡るスカンジナビア春の時代を演出。
「クヴィスリング」の名は後に、愛国者の代名詞として刻まれる事となる。

***パリ ヴェルサイユ宮殿(仮) [#of20560b]

&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);…………
&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);…………

マルコフとヴラーンゲリの愁色は濃かった。理由は言わずもがな、ヨーロッパではやり始めた「食人病」の事である。既にサヴィンコフとその官僚機構によって周知は為されていたが、ここまで急速な展開を見せるとは誰も思わなかった。
人間が人間を食う。そしてそれには貴賤が無い。強いて言えば共産主義者、サンディカリストは感染する度合いがかなり低いとの事から、双方ともこの病の正体がトロツキーの秘密兵器だと察していた。

&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);それで、この食人事件は西欧でどれくらい起きているのだ
&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);「どれくらい?」

マルコフがオウムの用に返して、それから大笑いした。しかし顔には疲れからか、色濃いしわが刻み込まれている。

&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);お答えしましょう、議長。この食人病とやらは黒死病のように深刻な広まりを見せております。特に若い人口が密集している地域、または若い人口が戦争で失われた地域で、相当数に感染の疑いがある
&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);具体的にどこを襲う?
&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);おあつらえ向きでね。シコルスキーを始めとするロシア系企業、それから彼らに買収されたドイツ系企業、フランス系企業等を襲撃するんですよ。「好んで」ね。ましてロシア軍将官の仮住まいや、西欧に戻った資本家たちの家も襲う
&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);しかしマルクス主義者を集めたゲットーはいっさい、襲わないのです! 社会民主主義者のゲットーがこの間、食人病で壊滅したにもかかわらず……いったい誰がこんな真似を仕向けているんでしょうねぇ
&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);神父たちを派遣するのは?
&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);議長。十字架や銀の銃弾よりも、アンネンコフがぶっ放した火炎放射器やホスゲンの方が効くのはポーランドで実証済みです。また歩兵用の甲冑ですか。化け物共に囲まれても生存力が高まる

マルコフは持参していたコニャックをラッパ飲みした。ヴラーンゲリは腕を組みながら、おおよそ見当のついた真犯人が。ヤギのような頭で洒落者のメガネを掛けた男があざ笑っている光景を思い浮かべた。

&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);(奴は世界を救う為に世界を爆破するつもりなのだ……あのウラジーミル・イリイチのように)

しかしそうはさせないと、ヴラーンゲリは冷静に考えていた。もし西欧を地に染めるような大戦争が再発した場合は、件の新兵器を大量投入してでも戦争にケリをつけるつもりだった。
エドワード八世がブリテン島でなく、ホワイトハウスを壮麗な宮殿に変えようとしている今となっては、あの孤島の為に政治的配慮を行う必要性がない。

&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);(アーサー王の伝説もろとも滅びて貰おうでは無いか)

それがヴラーンゲリが内密に、個人で出した結論だった。彼とその他最精鋭スタッフたちの枢密院では英本土決戦について事細やかな決議が出ていて、イギリス人2000万が特攻に出ても勝てる。との算段も付いている。
後は、彼等がどう動くかであった。彼はそれよりも、モスクワで政変が起きた場合……ごく近い時期に起きる権力闘争が、自分の軍閥にいかなる影響を与えるかのみを心配していた。

&ref(デーレンタール.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);失礼
&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);おい、貴様

政治局の長官デーレンタールは、ヴラーンゲリが不安の中でまどろんでいた時、姿を見せた。いつものように穏やかな顔で、妙齢の妻が総督に寝取られても動じない冷静さで、彼等に敬礼した。

&ref(デーレンタール.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);少しばかり野暮な話があってな。報告すべき事だ
&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);部署は違えど礼儀作法と言うものがある。ノックなしに部屋に入り込むなと、作戦参謀の時に何度も言っているはずだ
&ref(デーレンタール.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);善処する。しかし今はそれどころではない

デーレンタールはまとめた書類を机に置いた。マルコフが近寄り、手に取って斜め読みすると、ヴラーンゲリに向かって姿勢を正した。

&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);オランダの奴ら、イギリス行きの密航船を手配しているようです

ヴラーンゲリはマルコフをじっと見て、知っているとでも言わんばかりに答えた。

&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);それならインドのアカもそうだ。ボースが日本に取り入っているから攻撃はしないが、連中もロシアの強大化を恐れている。清からイギリスへの貿易が続いているのは奴らのせいだ
&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);ならばどうすると?
&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);ボリス・ヴィクトーロヴィチの立場を思え。総督ならこうした事態を許すか?

デーレンタールが意外そうな顔をしていたが、ヴラーンゲリにとってこれは芝居のようなものであった。密航船から「童貞処女」が運ばれ、イギリスで狂った実験の犠牲になっている事は陸軍情報機関も察知している。

&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);しかし、それではキリが無くなりますぞ
&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);セルゲイ・レオニードヴィチ。内戦時に我々は味方から、農民から収奪した事を忘れてはならんよ。どのみち白軍とは申せ、赤軍とは五十歩百歩なほど血にまみれていたのだ
&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);両方攻撃するんですな
&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);非行を改めねば、裁きに掛ける。我々は全ヨーロッパの指導者なのだからな
&ref(マルコフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);では、どのように決着を?

ヴラーンゲリは十字を切った。その脳裡には巨大な閃光の後に立ち上ったきのこ雲が描かれている。

&ref(ピョートル・ヴラーンゲリ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);Съ нами Богъ((御心のままに)).

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次の攻勢は、敵の謀略を未然に防ぐべく、ロシア側から行われる事となった。

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まずロシアが先に手を打ったのは中国問題である。中国大陸は依然として強力な中央政府が無く、地方は列強または軍閥の影響下に置かれていた。

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ロシア陸軍は、江南地方に駐屯する大日本帝国陸軍の松井石根将軍と協力し、急速に清朝への包囲網を形成する事で一致した。
既に溥儀が何らかの形でサンディカリスト集団に便宜を図っているのは、沈没した密輸船から多数の水死体があがっていた事。
そして赤色インドのボース政権から「ある計画がインドにおいて企図されていた」という報告からも明らかであった。
溥儀の計画は現地を統治していた軍閥頭目・龍雲の耳にも入っていたらしく、ロシアから宣戦布告を受けた直後、

&ref(龍雲.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);各人イニシタチブを以て損耗なく生存する事を望む

このように演説して、自ら階級章を投げ捨てたあと姿を見せる事はなくなった……すべてを察した軍閥の兵士たちは、ロシア軍を「解放者」と崇めて自主的な武装解除をする一方、龍雲を助命するよう哀訴。
成都で龍雲を捕らえたレビートフは彼の階級章を手渡し、

&ref(レビートフ.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);貴君の生命と自由は「中華民国」においても保障される

と言明した。

http://art5.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/258329246.v1539122616.png

他方、オランダは悲惨の一語に尽きた。何故ならオランダほど、イギリスに便宜を図って多数の人命を輸送した国は存在しなかった。
彼らは他国から集まって来た少なからぬ碩学をイギリスに送り込み、黒死病の如く広まりつつある吸血病がロシアの安全保障に重大な危機を与える要因を作った。

http://art5.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/258329120_624.v1539122259.png

故にオランダの街並みは、ロシア軍のロケット砲によって破壊し尽くされる事となった。あらゆる歴史ある市街地が火力と略奪の洗礼を受けた後、オランダ女王を載せた航空機が行方不明になったのを機にオランダ軍の士気は瓦解。

http://art1.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/258329114.v1539122244.png

先鋒に立ったカッペリは、アムステルダムに籠城したオランダ軍に女王行方不明の報せを伝えると、直ちに無条件降伏して助命を乞うべしと蘭軍司令官に要請。
しかしオランダ軍司令官は降伏よりも、かつて陽の沈まぬ帝国と呼ばれたスペインに立ち向かった祖先に恥じぬ名を残すべしと全軍に号令を飛ばした。

http://art1.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/258329762.v1539123993.jpg

これは、ロシア陸軍兵士が撮影したロッテルダムの写真である。これらの廃墟は、終戦時のオランダにおいて「一般的な」都市の情景であった。
アムステルダムの如く玉砕を選んだ都市。または降伏勧告が何らかの手違いで為されなかった都市はみなこうなった。理由はごくシンプルだった。
オランダほどイギリスと輸出入を交わした国は、サヴィンコフ体制下のヨーロッパでは存在し得なかった。
オランダすら生き残ったのは、他の地域をロシア軍が駆けずり回っていたからで、それを良い事に阿漕な商売をやられては、「殲滅やむなし」の声をサヴィンコフとていなす事が出来なかった。

オランダは荒廃した西欧のモデルケースとなった。燃料が無いので、遠くバクーからの石油を調達しなければならず、ロシアのエネルギー会社社長が宮殿の椅子に座ってもこびへつらうばかり。
食糧は当然ロシアの農家。それもシベリアで強制労働させられている政治犯の作った穀物を、ヤルタでバカンスにいそしむ農夫から得なくてはならなかった。
彼らがルーベンスの画を所望した時、勇敢にも偽の絵画を高値で売った男が惨殺された。

殺した男は買い取った農夫で、「詐欺師を殺しただけだべさ」と訛りの強いロシア語で言った後、本物のルーベンスをタダで強奪して本国へ帰って行った。
治外法権により農夫は無罪となり、これに反対意見を唱えた人々は農夫の集団農地へ送られた。

治外法権により農夫は無罪となり、これに反対意見を唱えた人々は農夫の集団農地へ送られた。また、男の葬儀はプロテスタントの牧師ではなく正教徒の神父が執り行った。
牧師連は強制的に正教徒となるか、或いはシベリアでキリストの復活を日夜祈り、そしてロシア農夫の糊口を凌ぐほどの穀物を、ただで作らなければならなかった。

http://art5.photozou.jp/pub/867/3222867/photo/258330675.v1539126166.png

内戦期にボルシェビキが発行したポスターが、秘かに地下で売買されるようになった。誰がこれを刷り周囲に売り渡しているのかは謎であったが、由々しい事態であった。
誰も彼もがロシアの体制を恐れ、忌み嫌っていた。かつては絵空事と呼ばれた共産主義への興味関心が、またもや鎌首をもたげ始めた。
次に起きるのは何か?

&ref(スンスンおじさん.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);決まっているとも。次の戦争だ。次の次の戦争だ
&ref(少年.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);↑の油のおっさんなんか、うちのおっ父とヨーロッパぢゅう駆け回ってるだ。ド派手な花火をあげて欲しいね!何せおらがお小遣い貰えるど?
&ref(NRPR戦闘団員.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);最近は聖ゲオルギー勲章のバーゲンセールやってんだ。戦争が終わっちゃ困るよ……軍大学を出た俺が、農夫あがりの先輩方の、草履取りをやる事になるんだぜ
&ref(神父ポルスキー.png,[[閣僚画像置き場]],nolink);暴力は忌むべき事だ。しかしこの大惨事が、ハリストスの教えを正教の下に統一する奇蹟をもたらしたなら……後世はこれを「千年帝国」の創業として認めるのではないか?

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白と、赤と、黒と、蒼い馬が、四騎士たちに鞭打たれて全てを踏みにじるべく駆け始めた。しかし、人々はいまだ地面に寝そべり、無防備な腹を晒し続けている。

TIME:"2018-10-10 (水) 08:26:28"

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