納得できない新政権と納得できない改革

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エンヴェル・パシャは納得できなかった。

大宰相の地位に就き、アブデュルケリムを新皇帝にして傀儡としたが国政を牛耳れないでいる。

軍は押さえたがケマルの死による国内の動揺は凄まじく、かえって治安維持に忙殺されてしまう。

大宰相が連邦制移行論者から帝国断固維持論者になった事で諸民族の不満が爆発していたのだ。

エンヴェルは彼らの怒りに納得できなかった。

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連邦制などという寝言を言ったのはケマルだ。

間違いを正して何故裏切り者の謗りを受けなければならないのか。

小国が寄せ集まろうが大国の餌食になるだけだとなぜ分からない。

民族自決は独立を損なう売国思想に他ならぬのだ。

青年将校に殺害されたのは皇帝と大宰相だけではない。

雄弁の貴公子として名高い外務大臣シャキーブも殺されていた。

後任はエジプト出身のチェルケス人である。

指名したのはエンヴェルではない。

政治の主導権を握ったのはケマルの腹心であった軍需大臣のイスメトである。

イスメトはマフムト・ジェラルと共にケマルの遺志を継ぎ改革を貫こうとしていた。

エンヴェルは彼らの政策に納得できなかった。

忌々しいケマルの犬め。

軽工業を重視して何になるんだ。

セメントと砂糖で国を守れると思っているのか。

今帝国に必要なのは逆賊を殺す兵器だ。

軍拡こそが生きる道だとなぜ分からん。

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イスメトを失脚させるまで二年を費やした。

構想段階であった創姓法や政教分離政策といったケマルの改革は闇に葬ったが、既に五か年計画は軌道に乗り白紙にはできない。

代わりの大臣に自らを兼職としたが生産力は低下する。

具体的には一割程。

対抗して重工業改革を起こしたが二つの経済改革を背負い工業力のキャパシティは上限にぶつかる。

結果、軍の増設は後回しとなった。いつになるかは誰も知らない。

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重工業の促進によってオスマントルコの生産力は向上し研究力も増した。

だが軽工業はそれを遥かに凌ぐ恩恵を出している。

エンヴェルは内治で功績が上げられないのであればと外征を欲し、隣国ブルガリアへの宣戦を発議した。

ある者は戦場がバルカン半島であることを不安視した。

先の大戦における敗北の記憶は新しい。

軍の装備は殆ど変化していないどころか、陸海軍に至ってはケマルの軍縮で減ってすらいる。

エンヴェルはサルカムシュ作戦を反戦の理由とするのに納得できなかった。

今回は敵を一国に絞っている。

ブルガリアはバルカンの小国の間でも孤立しているから横槍の心配は無い。

それにブルガリア軍は条約によって軍備が制限されたから当時より弱っているはずだ。

ある者は改革の完遂か中止の後に開戦すべきでは提案した。

今オスマントルコの生産力は工場建設に注力されて余力は無い。

これでは兵站と補給に悪影響が出てしまう。

エンヴェルは改革が終わるのを待つのも、改革を止めるのも納得できなかった。

好機がいつ迄続くのかわからないのだから動けるのであれば動くべきなのだ。

だが中断は経済に余計な混乱を招く。

特に重工業政策をこの程度の成果で止められない。

ブルガリアの国土に縦深は無きに等しいから杞憂である。

ある者は民族紛問題の激化を警戒した。

アッシリア事件以降、軍の出動は無いが火種は燻っている。

戦争となれば軍を国外に送るのだから国内は手薄になってしまう。

エンヴェルは戦争が民族紛争に繋がるのに納得できなかった。

アッシリアの裏にはイギリスの影がある。

国に縮こまっていては奴らの魔の手を払えない。不当な干渉に武力行使で抗議すべきだ。

帝国の存続には民衆が臣民としての誇りを持ち、他国を威圧する華々しい勝利が必要なのだ。

開戦の正当性が無いという意見には、領土奪還以上の大義は不要と一蹴してしまう。

全軍をヨーロッパに展開すると1936年5月14日にブルガリアへ宣戦布告した。

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エンヴェル・パシャは納得できなかった。


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Last-modified: 2020-01-25 (土) 18:48:45 (65d)