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 Ungern-Sternberg君は或夜ここまで書いた。Ungern-Sternberg君は腕組をして考え込んでいる。先ず書き掛けた記録の続きが、次第もなく心に浮ぶ。

連合国は幾分の不満を持ったが国民がこれ以上の戦争を望まなかった為矛を収めた。亜米利加が占領したIceland、Greenland、蘭領印度について同盟国同士で揉めている。

我々には特に変化はない。華南に漢人自治区を作ったくらいだ。Wrangelは齢七十を超して猶露西亜政府に君臨している。

近年亜米利加等の報道機関がAnastasia陛下の正統性を疑うgossip記事を度々書く。平民共の心無い言葉に悩まられたのかこの頃は陛下のお顔を見る事も叶わない。

おれは今も大可汗の地位にいる。第九世Jetsun Dampaが見つからないからだ。英吉利が西蔵に圧力をかけていると言う報告もある。

そしてつくづく考えた。世間の人は今の自分を見て、Ungern-Sternbergは年を取って情熱がなくなったと云う。しかしこれは年を取った為ではない。自分の人生を顧みてその折々の選択が、当時はそれしかないと思っていた道が正しかったのか疑問に思ったからだ。

蒙古人の支持を得る為の戦争で北京まで攻める必要はあったのか、大可汗の地位は受けなければならない物だったのか。日中戦争に託けて中国と戦争する必要はあったのか。第二次露西亜内戦でAfghanistanと東Turkestanを滅ぼす必要はあったのか。

Persiaは蒙古ではなく露西亜が領有すべきではなかったのか。枢軸攻撃の為Osmanを滅ぼす必要はあったのか。仏蘭西から先まで占領する意味はあったのか。阿弗利加や日本列島、伊太利を侵略する必要はあったのか。

Ungern-Sternberg君はこう思い直して、これからの時代を生きる貴種の為、新世代の君主制政治の担手達に向けて筆を取りここまで書終えたのだった。そして静に巻の首から読み返して見た。そして結末まで読んだときには、夜はいよいよ更けてた。
 
Ungern-Sternberg君は筆を取って、表紙に拉甸語で VITA REGALIS と大書した。そして文庫の中へばたりと投げ込んでしまった。

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Last-modified: 2019-06-02 (日) 17:09:41 (167d)