一九五十年になった。

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 忽必烈の征東は海から上陸し失敗した。おれの征東は空からだ。

Semyonovが指揮する空挺部隊が長崎を占拠した。おれが率いる軍を乗せた輸送艦隊が蒙古の旗が翻る佐世保港に悠々と入港する。

鹿児島の沿岸防衛隊を殲滅した後に軍をSemyonovと二手に分かれて進軍する。渡海攻撃となり何度も海軍に妨害を受けるが本州侵攻に成功した。

最早蒙古軍を妨げる物は無い。Anastasia陛下へ対日交渉について手紙をしたためているとUngern-Sternberg家縁故の者が挨拶に来たと報告が来た。

Ungern-Sternberg家は長い歴史を持つ家だ。当然血縁も広い。名を聞くとBalthasar Jakob Wilhelm Alexander Benedictus von Ungern-Sternbergと名乗ったと言う。

聞いた事があるような。はっきりとしない。兎角顔を見るとしよう。革命騒動で多くの貴族が露西亜を離れた。日本に流着いた者がいても可笑しくは無い。

我が家名を僭称する輩であったなら首を刎ねなければならん。


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 部下が連れてきたのは痩せた老人であった。Ungern-Sternberg家は騎士の家だが芸術家も多いから見た目はそれほど問題ではない。かなり衰えているようだが気品は感じられる。

持寄った写真と幾つか質疑で縁者であると確認ができた。Balthasarは内戦勃発後独逸に避難し、弟Rolfと合流後家財を売りながら各地を転転としたが日本の外国語教師の職を紹介され一九二六年日本に渡ったそうだ。

弟はどうしたか聞くと七年前に亡くなったそうだ。独逸人と結婚した妹とも連絡は取れず妻も子もいない天涯孤独の身を嘆いていたときにおれの事を知り会いに来たと言う。

おれは彼の苦労を慰め握手をしようと前に進むとBalthasarは豹変し懐から出した拳銃をおれに向けた。

おれは部下を制しBalthasarにどう言う事か尋ねた。彼の握る銃は日本製のようで構えも慣れたようには到底見えない。武器を向けているのはそちらだというのに目を剥き荒い息を吐き顔も血が上って桃色に染まっていた。

BalthasarはおれをUngern-Sternberg家の恥曝だと罵り、日本から出てけと言った。この遠征は露西亜帝国の為であると諭すが、Sakhalinを得るのに此処まで攻め込む必要がるか此処まで殺す必要があるかと聞く耳を持たない。

この国だけが私を受入れてくれたのだ。私は貴族として恩に報いるのだ。Balthasarは震える声で譫言のように繰返し呟いている。部下は彼を嘲笑った。手も震えてしまい握る銃は段段下を向いて行ったからだ。

今銃口はおれの爪先に向けられている。だと言うのにおれは死を意識した。初めて恐怖を覚えた。背筋に冷たい物が流れ鳥肌が立った。

部下共はおれが動かないのはBalthasarを滑稽な見世物として愉しんでいると思っているようだ。おれは死の恐ろしさに動けないでいるだけだ。

終わりは訪れた。極度の緊張に晒されたBalthasarは意識を失い銃を手放し崩落ちた。部下はにやりにやり笑っておれの指示を待っていた。おれは答えずBalthasarの顔を掴むと通訳を伴い外へ出た。

おれはまだ人の気配がする家屋を探すと戸を蹴破り呼出した。奥から薄汚れた女が出てきた。Balthasarを女の前に投げ出すと通訳を通してその男はこの国を救った勇士であるから丁重に扱えと言い陣営へ戻った。


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 戦争は終わった。日本と露西亜蒙古同盟の和平交渉はSakhalinと朝鮮の清津を露西亜帝国に熱河省を蒙古に割譲し、連合国との終戦交渉が終わるまで蒙古の指導下に入ることで合意した。

連合と日本は現在占領状態にある場所を各国が領有することで決着した。

大陸に戻る船の中でおれは戦後処理に追われていた。独逸と仏蘭西を当分の間蒙古領とし、墺太利に親独派のSeyβ-Inquart政権を独立させる。

波蘭はLithuania人他Baltic人国家とポーランド人国家に分断し、CzechはSlovakiaと合併させる事を記した命令書を書くと休む事にした。

漢人自治区の設定もしなくてはならない。だが非道く疲れている。眠くて眠くて仕方がなかった。

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Last-modified: 2019-06-02 (日) 16:32:17 (22d)