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 その後の世界の事を話すのを忘れていた。おれがバルカンを走り回っている間に、世界は大分きな臭くなっていたようだ。

ドイツのヒトラー総統は、オーストリアとチェコスロバキアでは満足ができなかったのか、1939年10月にポーランドへ攻め込んだ。ドイツに譲歩を続けていた英仏も遂には宣戦を布告した。遠く大陸の反対側でも、中国人とロシア人が揉めたそうだがよくわからん。

ヨーロッパは瞬く間に劫火の世界になった。ドイツはロシアと何回目かわからないポーランドの分割をして、東から北に西に軍を進めていった。良く飽きないものだ。ヒトラーもおれを真似て軍を率いて戦場に出ればいい、1年で嫌気がさすだろう。

1940年5月、ロシアがドイツとの不可侵条約を破って宣戦布告した。ドイツは低地諸国を侵略していた時であり、背後を狙ったのかと思ったが、ロシアも極東でまだ争っていたらしい。共産主義者の考えることはよくわからん。

独ソ開戦には多くの国が反応した。列車に乗り遅れるなとばかりにルーマニア、フィンランド、ハンガリーが枢軸同盟に次々参加し、イタリアとクロアチアは枢軸同盟に加盟せずロシアに宣戦布告した。ムッソリーニが何を考えているのか、おれにはわからない。

ルーマニアでは鉄衛団とか云う、胡乱な集団がクーデターを起こしたが、ヒトラーは奴等が嫌いなのか、ウィーンで会議を開き、トランシルヴァニアをハンガリーに渡した後、ブルガリアにもドブリチをやると云うから貰っておいた。

領土を明け渡すことになった鉄衛団はルーマニア国民によって引きずり降ろされ、カロルの息子ミハイが即位した。ヒトラーはおれに参戦を望んだが、礼は資金と物資で示した。ロシアの地でブルガリア人が倒れ臥すことはあってはならない。

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 ヒトラーはいけ好かない男だが、ヴィルヘルム2世よりは有能だったらしい。ロシアの相手をしながら、1940年9月にフランスを降伏させた。フランスの植民地はアフリカが抵抗を続け、シリアは山嵐が掻っ攫い。インドシナはロシアの属国の日本の属国になった。

赤軍はバルカンを南下し、一時ブルガリア近くまで迫ったが、枢軸同盟が跳ね返し、1942年4月にロシアは降伏した。スターリンは死に、共産主義者共はヨーロッパを追い出され、マレンコフとベリヤ指導下で極東に入植を始めたそうだ。

この期に及んでイタリアは、遂にクロアチアを連れて枢軸同盟に加わった。そしてすぐに英仏にアフリカ植民地を奪われた。ムッソリーニが何を考えているのか、おれにはわからない。

ヨーロッパはドイツが覇権を握ったが戦禍は絶えない。ドイツ占領地は抵抗と弾圧が相次ぎ、高官も数人殺されたそうだ。甚だしい鉄が砕かれ、夥しい血が流された。ヒトラーとドイツ国民の理想は叶ったのか、それはこの代償に見合ったものだったのか。おれのあずかり知ることではない。

ルーマニアは枢軸同盟を維持しながら社会主義に移行していた。日本もソビエトの指導下で天皇が復位した。長引く戦争で大義は骸となった。

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 ブルガリアは平和を謳歌した。おれは誓い通りに、大ブルガリアの繁栄のために勤しんでいる。国家は人に似ている。人体は血が巡ることで生命が維持される。国も同じだ。国の血とは即ち資本であり、資源であり、物資である。国内を行き来する民衆もまた血であると云えるだろう。

よってそれらの円滑な輸送こそが肝心で、国家の血液であるインフラ、つまり鉄道こそが国家の血管、国の礎、大ブルガリア興隆に必要なものだと極っている。ブルガリアの産業技術も十分育った。今こそ国中に鉄道を敷く時だ。

弟とムシャノフはおれの言葉に賛同したが、複雑な顔をして、程程でお願いします、と云った。奇妙な奴等だ。中途半端では意味がない。

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 国に火の粉が降りかからない為にも、国防は疎かにできない。ギリシャ戦争終結後に動員を終了したが、猶も軍への残留を望んだ者達で再編をした。兵数を抑える代わりに、軍の要望を受けて高度な機械化を方針とした。

テッサロニキの港を開発し、ささやかながら空軍と海軍も創設した。金はかかったが、これくらいあれば、ドイツもイギリスもおいそれとは口を出せまい。

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 ブルガリアは順調に成長している。だが問題が無いわけではない。例えばブルガリアに帰属したセルビアとギリシャがそうだ。おれはおやじやゲオルギウスやヒトラーのような、パラノイアでもメガロマニアでもない。傀儡政権などはせずに独立させても構わない。

特にセルビアにはクロアチアから逃れてきたセルビア人で治安が悪化している。クロアチアはセルビア人の土地と財産以外興味が無いようで、止めるどころか嬉々として送り出してすら思える。

だが共和制は駄目だ。何時の間にか東欧国家の国王はおれ一人になっていた。ユーゴスラビアとギリシャは無い。アルバニアもイタリアに併合され、ゾグ家はブルガリアに亡命している。クロアチアは国家社会主義体制。ルーマニアは社会主義体制。ハンガリーは王が不在。スロバキアは共和制だ。

そもそもヨーロッパで国に君臨する王はおれを除けば、イタリアのヴィットーリオ・エマヌエーレ3世、イギリスのジョージ6世、スウェーデンのグスタフ5世だけだ。あとは亡命している。山嵐は皇帝だ。

だから君主制国家を独立させたいが、ブルガリアが持つセルビアでは独立が難しい。うらなり君も乗り気ではない。ギリシャもゲオルギウスの奴を復位させては国民の気が済まないだろう。冗談で弟に、ギリシャ王にならないか、と云ったら、ナポレオンにでもなる気ですか、と呆れられた。


 それと日に日にドイツの干渉が増している。制海権が取れないから、陸路で北アフリカに向かいたいのだろう。もしくは時代遅れの3B政策かもしれん。国内にも口出しをしてくる。妻もムシャノフも心配しているが、おれは奴の悪趣味に付き合うつもりは全くない。

外相のフィロフは、形だけでも枢軸同盟に加盟して、象徴的な程度の戦争参加をするべきだ、と云う。だが、ドイツは同盟国にも容赦なく負担を強いている。政事干渉もはるかに増してくるだろう。ルーマニアは同盟に入ったから、国土を切り取られる事を受け入れることになったんだ。

文部相のブロフは、英国と同盟を結び、アフリカの連合国軍を招くべきだ、と云う。英国の勝利などは、どうしても期待できない。前の大戦のようにアメリカがつけば可能性はあるが、その気配はない。万が一連合が勝利するにしても、それまでにどれだけの爆弾がソフィアに落とされるか。

おれはヒトラーから来た、ベルリンへの招待状を読み終え放り捨てた。馬鹿馬鹿しいが無下にもできない。久しぶりの国際列車での旅を楽しむと考えよう。ドイツ国内に入るまでは自分で運転しようか。

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Last-modified: 2019-05-05 (日) 13:56:58 (18d)