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 宣戦布告したらさあ進軍だ、とはいかない。部分動員法を制定して、師団に兵を拡充させねばならん。次にそのために消費した物資を補填し、物資と石油の備蓄に余裕を持たせるために、各国から購入しなければならん。

開戦前まで血気盛んだった国民も、いざ戦争だと云うと不安に冷や水を浴びせられ、声が小さくなる。威勢の良い事を云っていた新聞も慎重になる。揺らぐ民心を落ち着かせるために、小規模な公共事業を行い、プロパガンダで世論を誘導し、安定させる必要もある。

全てを終えても、セルビアとの国境に敵兵の姿はない。当初の作戦に従いセルビア侵攻を開始する。この作戦は包囲の解消とは別に、イタリアのギリシャ領侵入を妨げる目的が新たに加えられた。おれの率いる軍団はセルビア侵攻軍の補助と、ソフィアへの圧力を減らすためにクマノヴォに向かう。

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 作戦は凡そ成功した。ベオグラードの占領はクロアチアに一歩遅れた為、セルビア政府はクロアチアに降伏したが、包囲の解消とイタリア・クロアチア軍南下の阻止と云う目標は達成された。セルビア侵攻軍は1度の戦闘も無くマケドニアの完全解放にも成功した。

おれの軍団はクマノヴォ到着前に数回戦闘を行ったが、敵軍の足並みは揃ってはおらず、軍の連携も杜撰だったので各個撃破は容易であり、ソフィアに駐屯する弟の軍団の支援もあったから、少ない損害でクマノヴォを占領した。

ギリシャ軍もトルコ戦線から軍を引き抜いたのか、旧東ルメリ側からソフィアとプロヴディフに攻撃があったと報告が来たが、マリツァ川の防衛は盤石であり、突破される危険性は無いと云う。おれはギリシャ軍に爆撃機の姿が無い事に安堵した。

続いてギリシャ領の分断作戦の為に、おれは軍団の攻撃目標をテッサロニキとした。セルビア占領軍は合流次第、ヴァルダル川対岸のコザニを攻撃するように指示した。テッサロニキの北にはあのメタクサスの名を冠した要塞線がある。おれはそれを越えねばならん。

テッサロニキはブルガリアとギリシャの分水嶺であった。第1次バルカン戦争の折、おやじはギリシャ軍を軽視し、エーゲ・マケドニアはブルガリアが全て手に入れると信じていた。セルビアとの国境ばかりを気にしていた。しかし数時間の差でテッサロニキはギリシャの手に渡った。

遅れてきたブルガリア軍に対して、ギリシャに降伏したオスマントルコのテッサロニキ統治者は、私には一つのテッサロニキだけであり、もう降伏している、と云ったそうだ。ブルガリア軍の面目は潰され、ギリシャ軍の勇名は轟いた。

ブルガリアに残されたその禍根が、再びのバルカン戦争、欧州大戦へと踏み込ませ、戦争のたびにブルガリアは国土を失った。

あの日の復讐だなんて考えてはいない。あれはおやじの浅慮と無鉄砲が悪いんだ。おやじが馬鹿だった。だが、テッサロニキを手にできないのならば、大ブルガリアなんて夢のまた夢だ。おれは攻撃命令を下した。

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 ポポトリビツァ、イスティビ、ケルカギア占拠の報告が来た。メタクサス・ラインを突破した。それもそうだろう。あの要塞線は以前のブルガリア国境沿いに造られたが、ギリシャ自ら要塞線を跨いで、ブルガリア領に進駐したのだから。

旧ユーゴスラビア国境沿いには備えが無いから、ブルガリアはセルビア側から迂回して攻撃もした。要塞の力を十全に発揮できなかっただろうに。ただ全くの無力ではなかった。相応の被害が出てしまった。

テッサロニキ市街地に向かうおれの下に、コザニ占領の報が届いた。白い塔にたなびくブルガリアの旗が見える。

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 ギリシャの奴が「もうたくさんだ」と云った。だがその条件では頷けない。ソフィアの安全は確保したから、弟指揮下の軍団に前進を命じた。イタリアのアテネ上陸に合わせて、アルバニア国境の要塞も占拠したら、今度はイスタンブール周辺を条件に入れてきた。

トルコ人の土地なんかいらん。エーゲ・マケドニアをよこせ、と云うと、外交官は押し黙って帰っていった。こうなれば山嵐を支援してあの一帯を占領させようと考えた。他国が占領した土地を、交渉のテーブルにはのせられまい。

ギリシャ本国に防衛用の師団を置いて東へ向かおうとしたら、イタリアがギリシャと白紙和平を結んだ。セルビアを併合したから全くの白紙和平ではないが、アテネとクレタ島を占領していたのだから、もう少し欲張ろうとは考えなかったのか。

今少し待っていれば、おれと山嵐がイスタンブールを落として、ギリシャ本土も支配できたかもしれないと云うのに、ムッソリーニは何を考えているのか。

この戦況から開戦時の状態まで、押し戻されるとは思わないが、イタリアとの終戦でギリシャに勢いが戻るのは都合が悪い。今度はブルガリア軍がアテネを占領しようにも、被害が馬鹿にならない。どうしたもんかと悩んでいると、機甲師団が完成した。

おれは早速戦線に投入した。戦車は容易くギリシャ軍の防衛線を突き崩し、慌てて追いかけた歩兵によって、ギリシャの前線兵はケファロニア島に蹴り出された。

猶も進む戦車を俺の軍団は必死に追いかけ、あまりの速さに、満足な防衛体制を構築できなかったメタクサスをアテネから追い遣った。

戦車の力は凄まじい。この先、列強国はブルガリアの比ではない性能の戦車を、ブルガリアの比ではない数で戦争をするだろう。欧州大戦を超える苛烈な戦いに、ブルガリア国民は巻き込まれるべきではない。ブルガリア軍は、バルカン半島を越えて展開されてはならない。

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Last-modified: 2019-05-02 (木) 18:56:21 (107d)