対立の中の対立 †
アナーキスト政権成立から1年が過ぎましたので内外の情勢を総括しましょう
儂もう疲れた…会議!弁論!書類!会議!弁論!書類!の日々はもう嫌…今度にしない?
表面上は穏やかに見えましょうとも事態は非常に切迫しておりますから今度があるか分かりません
報告が国も内容もバラバラに押し寄せるもんでコッチは頭こんがらがってんだよ
分かった分かったせめて草臥れた学無しにも理解できるよう頼む
まず我がコミューンですが大恐慌の被害を免れ選挙以降政情は安定しています
我々アナーキスト政権も北アフリカ解放戦争の勝利と平和的なロマンディ併合によって支持は盤石です

無政府主義の魁バクーニンのジュラ連合が生まれた地がコミューンに加わるとは感慨深いものです
この支持を武器にソレリアンの総力戦法案とジャコバンの計画経済法案を完璧な廃案に追い込みました

ドイツへの復讐に必要たって協同組合主義に舵を切ったばっかに経済の統制は受け容れられんよな
あいつら何度否決してもキャンキャン五月蝿くて敵わんかったがやっと静かになる
昨年の選挙で経済は自由化が望まれていると既に証明されのに食い下がりましたね
ですが対独報復戦争に遅れが生じるのは事実でしょう
そうだとしても奴らが立て直すよか先だろう
軍としては如何ですかガムラン将軍?

なんでトラヴァイユール閥のわしがここにおるん?
アナーキストの将校はどいつも義勇兵あがりで軍政に弱いんだよ
比較的得意なタンギ元帥に任せるのも角が立ちますので
?
元帥が発表した『ロシア内戦における黒軍の分析』にジョワイユ氏が真っ向から反論しまして
若いアナーキスト軍人の間で論争が起きてしまっているのです
そこに当事者がいるのだから一言で終わらんか?
何てかね…若い者が儂について熱心に議論しているところへ入っていくのは、その、恥ずかしくて…
いい年した男が何を言うか全く

はっきり言うがドイツと戦うには数が足りん
全体主義者どもの経済支配には反対じゃったがリソースをアフリカ投資に削ってどうすんじゃ
協商国やドイツ植民地の南からの圧力を軽減する為ですので我慢してください
付け焼刃の軍が使い物になればいいがな
とにかく歩兵師団の増大を急いどるが早くとも翌年の秋じゃろう
海軍の方は?
ジャコバンの鯨坊主に丸投げしとる
愛してやまない潜水艦でもこさえとるんじゃないか


…ドイツとロシアは戦車を集中運用する機甲戦を採用したそうですがどう思われます?
わしゃアレを好かん
………
貴重なご意見ありがとうございました。お忙しいでしょうからこのままお帰りいただいて結構です

経済に負担を書けない範囲で軍拡を急いでいるという事でしょう
バトゥコは対独開戦前にはタンギとジョワイユの仲裁をしといてくれよ
気が重いが仕方ない
次にそのドイツ情勢ですが


大恐慌に対して積極的な介入を行いました


ですが結果は失敗しドイツ経済は今も苦しんでいます
ザマァないぜ
ですがドイツの翳りは欧州情勢に波紋を広げています



同じく介入政策を採ったロシアは恐慌を克服しキリル・ウラジーミロヴィチを帝位に据えロシア帝国を再建しました

オーストリア皇帝に即位したオットーはキリルの娘を娶り二重帝国の集権化を宣言

ロシアの威にハンガリー等は屈しハプスブルク帝国も復活しました




しかも首相はお貴族様だって話だ


どうやら大戦からヨーロッパの時計はフランスを除き針が逆回りしているようだ
青年皇帝はドイツの東欧支配に白手袋を投げ両国の関係は悪化の一途です


若いってのは羨ましい何処迄も向こう見ずだ
さらに新たなローマ教皇は穏健保守のエリア・デラ・コスタ枢機卿となりハプスブルク家からイタリア王を選出しました


ドイツは欧州守旧勢力の中で孤立しています
だがフランスも革新勢力の中で孤立しちまった






それもこれも国王気取りのモズレーが政権を握っちまったからだ
同盟国だったイタリア社会主義講和国もオランダのサンディカリスト政権も脱退しイギリスの影響下です


アメリカやアジアにまで支配の手を伸ばすイギリス連合の姿は大英帝国そのものでしょう
オランダの革命に大規模な支援をしたこともあってこの仕打ちにフランス人民の対英感情は底まで落ちました
イギリスへの嫌悪は全体主義と統制経済にも向けられており皮肉な事に自由の守護者と言う自負が市民から生まれてきているようです
喜ぶには複雑だなそりゃ
欧州では右も左も強力な集権国家を志向しています
俺ら以外で自由主義を保っている政府は内戦下のアメリカ・サンディカリスム連合だけか?
仏米の次に自由主義的なのは労働運動を弾圧せず植民地の独立を認めた君主制国家の日本かもしれません




世も末だなオイ