ヨーロッパのどの国にも目を星のように輝かせ、経済の計画化ができて、人々をそれに従わせることができると信じる者がいた。彼らは、すべての経済問題を解決できるのは国家であると考えた。こういう考えを持っていながら、自身はリベラルな思想家だと勘違いしている。彼らは官僚制度に支えられた経済の独裁化(計画経済化)を指向しても、言論の自由が守られ、自由な投票による政府と秩序ある正義の実現が可能だと考えた。こうした連中が『全体主義的リベラル』であり、ニューディール政策の生みの親なのである*1

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Epilogue

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最後の独裁国家、ソビエト連邦の消滅により、地球に残る国家は民主主義国家だけとなった。
146年風月、旧合衆国(正式名称アメリカ合衆国)、民主主義世界を滅亡の一歩手前まで追い詰めた敵は、遂に地球上から完全に一掃されたのである。

ソビエト連邦消滅後、小惑星帯に逃げ込んだ日本帝国の徹底抗戦グループ―通称「Toyoashihara」を「更生」させるべく派遣された旧合衆国宇宙艦隊が見つけたのは無残な廃墟であった。

帝国主義者の自滅として第一報が送られた際は旧合衆国のみならず地球全土でお祭り騒ぎとなった。
これで質量攻撃に怯える必要はなくなり、世界に真の平和が訪れると。
これまでに斃れた命は無駄ではなかったのだと。

しかしながら「Toyoashihara」の廃墟を探索した艦隊は恐ろしい事実を発見する。
彼らが破滅したのは、単なる内輪もめというわけでなく、その労働力の少なさを補うために作られていた生体機械に反逆された結果だったのである。
ポセイドン・グループの遺伝子操作技術の粋を集めて作られたその生体機械は僅か30体でありながら1万人以上がいたと推測される「Toyoashihara」を破壊しつくした。
「Toyoashihara」の全ての技術を持ち去った生体機械は現在も行方不明であり、いつ大軍を率いて地球を攻撃するかも不明である。

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このような情報が伝わると地球は恐怖のどん底へと叩き落された。
「Toyoashihara」の壊滅と共に完全破棄されるはずであった「Project Safehouse」は復活し、数十倍の規模で全世界に「Vault」が建設された。
生体機械によって人類が滅ぼされるという恐怖から、フランケンシュタイン・コンプレックスは最高潮に達した。当初生産されていた生体機械は全て青髪であったため、第二の魔女狩りが起きなかったのは不幸中の幸いだったといえるだろう。
このような恐怖の副産物として、世界の協調は必然的に進んだ。
第一次世界大戦の後に第二次世界大戦は起きたが、第三次世界大戦は起きなかった。
最盛期には一万発を超えたともいわれる反民主主義勢力鎮圧用装置―核兵器は、ただの一発も人類に対して用いられることがないまま解体処分となった。

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(旧合衆国が民主化戦争時代に数億人単位で非民主主義者を「更生施設」に送り込んだため)各国の性質が均質化していたということもあるが、生体機械の脅威に対抗するため、世界の統合は100年前後の楽観的なコスモポリタン達にすら考えられなかったほど順調に進み、国際連合原加盟国の12ヵ国*2及び「解放共和国」142ヵ国計154ヵ国*3が人類合衆国(United States of Mankind)、拡大ローマ共和国、チャイナ連邦、人民主権連合体の4ヵ国にまで統合された。
これら4ヵ国同士で新たに対立構造が生まれるといったこともなく、シチリア条約機構が締結されたように軍事上における統合は既に地球規模でなされており、現在にいたるまで各国の連帯に目立ったほころびはない。

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生体機械が髪色も変え人間に成りすますことが想定されたが、これも各国の連帯の結果全世界規模による生体認証システムが導入されることとなり、一応の解決をみている。
このシステムは反民主主義運動への監視にも用いられるようになり、組織だった反民主主義運動はこれ以降行われなくなった。
「兄弟同盟」という、名目では民主主義を掲げながらも実態として無差別テロを行っていた地下組織も、これで完全に壊滅した。

 
 

これらの世界協調の結果国家間の障壁は最小限となり、人、モノ、金の移動が活発化した結果、異文化同士の衝突が増えるようになった。
民主主義諸国は新たな対策をとることを余儀なくされた。
国家、民族間の融和を促進するために、人種などの先天的属性に対する差別は徹底的に排除された。
どのように優秀な人物であっても、一回の差別的言動によってそのキャリアは一瞬にして破滅するようになった。「Efficient Sociopath(有能な人格異常者)」という概念は消滅した。
冤罪を避けるため、個々人が自主的にテレスクリーンを用い生活全てを政府に申告するのが一般化するようになった。

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政府に申告するだけではなく、民間のサービスにおいても自らの生活を記録・公開する者たちが表れた。彼らは「テレスクリーン映え」を競っており、独自の文化を形成している。

 
 

反差別運動が排除する対象は現代の文化や政治だけでなく、過去の芸術作品や有史以来人類の生活において非常に重要な地位を占めていた宗教にも及ぶようになった。

145年の時には旧合衆国で大盛況となっていた「風と共に去りぬ」はもはやどこの映画館でも見ることがかなわない。監督が組合主義支持者であった「モダン・タイムズ」も同様である。公開差し止めを行ったのはフーヴァー旧合衆国大統領の数少ない功績の一つとして知られている。
かわりに現在流行っている映画は独裁帝国に民主主義を求めるレジスタンスが立ち向かうSFものである。八作目の最新作は特に人種的多様性に配慮したことから、批評家から絶賛されている。制作会社(この会社も元々の会社の創設者が人種差別主義者であったため一度倒産させられている)は最新作の監督と新たに三部作の契約を行った。

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ほぼ全ての宗教が性別や人種差別を助長するとして活動禁止に追い込まれた(スパゲッティ・モンスター創造説を公教育に取り入れようとしていたFSMismも禁止されたが、奇妙なことにこの宗教の信者達は他宗教の信者と異なり、一切抵抗を行わなかったため、元信者が全員社会復帰に成功したことが特別に記録されている)。
結社の自由の観点から政治団体としての復活は認められたが、憲法に反する教議を削除しなければならないという制約上、もはや取るに足らない存在となった。
かつて欧州を中心に世界に遍在していた「教会」は現在は博物館となったものをわずかに見るのみである。多くは公会堂や「更生施設」へと改築された。
学校では創造論は教えられなくなり、進化論の支持者は旧合衆国領内でも90%を超えるようになった。

ラシュモア山の記念碑は破壊され、アメリカ独立宣言や旧アメリカ合衆国憲法も人種差別を助長するという理由から人類合衆国などの教科書から排除された(独立宣言はアメリカ・インディアンに対する差別的表現が原因、憲法は奴隷の存在を想定に入れた3/5条項などが原因)。旧合衆国建国の父達も奴隷制維持、アメリカ・インディアン迫害継続のためにイギリスから反乱したという見方が公式見解の一つとして記されるようになった。
エイブラハム・リンカーンも、旧合衆国第二次内戦終結当時は人種差別と戦っていた英雄であると評価されていたが、研究者の再調査の結果彼が人種分離主義者であることが発覚してからは全ての銅像が破壊された。
教科書では旧合衆国の第一次内戦は事実上人種差別主義者の内部抗争として教えられるようになったが、ゲティスバーグの演説は名分と実態の乖離の好例として例外的に今も教科書にそのまま掲載され続けている。
第二次内戦の英雄、世界から民主主義を守り抜いたカーティスやマッカーサーらも、英雄として扱われ続けてはいるものの、彼らの周囲に差別主義者を置き続けていたという理由でかつてほどの名声は得られていない。
人類合衆国の首都であるコロンビア特別区、又の名をワシントン特別区と呼ばれたこの地は、双方の名が忌み名となったことからThe Districtが正式名称とされるようになった。

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民主化戦争期、各「解放共和国」において広まりつつあったはずのヤード・ポンドといった単位はフィートと同様歴史上の存在となり、国際単位系が真の意味で国際的に用いられるようになった。

国家統合の前から続いており、民主化戦争の大義名分であった民主主義(代議制民主主義)はもちろん現在に至るまで維持されているが、もはや各政党の政策に大きな隔たりは見られなくなっている。そのため、各候補者のネガティブキャンペーンが選挙結果を左右しているという批判も見られている。

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事実、最新の225年の選挙では「金持ってるだけのお笑い芸人*4」が対抗馬をネガティブキャンペーンで蹴落とし、人類合衆国の現大統領となっている。

 
 

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現在民主主義諸国は我々が現在使用している言語そのものが差別を助長しているとして、これらを排除すべく、「ニュースピーク」と呼ばれる人工言語を創設しようとしている。
ルドヴィコ・ザメンホフが作り上げた「エスペラント」と共通点も多いが、この「ニュースピーク」の目標は組合主義や帝国主義のような反民主主義思想を論理的に表現できなくすることである。教科書などで用いられる古典小説も全てニュースピークに翻訳されたものに置き換えられ、ニュースピークによる教育を施すことによって完全に民主主義思想に基づいた社会が形成されることが見込まれている。
現在用いられている反差別活動「ポリティカル・コレクトネス」もニュースピークにおいては「ポリコレ」という単純な名前で呼ばれるようになる。
258年を目途に、民主主義諸国の公用語は英語などから「ニュースピーク」に完全に置き換えられることとなるが、その後は反民主主義思想が二度と復活しなくなると期待されている。

 
 
 
 
 

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Stars and Stripes(星条旗)を掲げる人類合衆国平和維持軍は生体機械からの攻撃に備え、今日も全宇宙に対し終わりなき索敵を続けている。

 
 
 
 
 
 

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人類普遍の原理―民主主義を守るために。

 
 
 
 
 
 
""We can afford all we need, but we cannot afford all we want." – Franklin D. Roosevelt
 
我々は必要なもの全てを手に入れることができるが、望むもの全ては手に入れられない。―フランクリン・D・ルーズベルト
 
 
 
 
 

コメント返信

フランコスペインが民主国家として生き残ってるの違和感はんぱねぇなw -- 2019-02-03 (日) 23:55:04

名無し2.png「権威主義」という言葉が彼のイデオロギーにぴったりだと思うんですけどね*5。でも主観で滅ぼしてしまったら傀儡国家持ちのオランダも、そして残りの国も滅ぼしてもおかしくありませんし…

名無し2.pngアインズヴァッハの門をくぐったフランコはきっとそれなり(民主スライダーを見る限りそれなり)の民主政治家だったのでしょう。

 
 

信託統治領民が北米に流れ込んできても追い出そうにも追い出せずじわじわと治安悪化していって第二、第三のロングが出てきてはそれを叩き潰すの繰り返しだろうなあ -- 2019-02-04 (月) 01:10:23

名無し2.png「高度な監視社会」の形成まではそんな感じでしょうね。「壁」を建設するのではなくうって出てその元凶との泥沼の戦いに延々と身を投じる。それがこの世界の「合衆国」のやり方だと思います。

 
 

俺生き残ったの.......??????? -- ペルシャ? 2019-02-04 (月) 16:46:01
やったよ!俺達生き残ったんだ!(対立すら忘れてのハグ) -- クルディスタン? 2019-02-11 (月) 14:47:19

名無し2.pngKRのペルシャは割と民主体制になることが多いですね。「生き残った」の定義は微妙ですが殆どの国民も王族も「更生施設」入りを免れていると思います。

名無し2.pngスンニ、シーア、アレヴィーとヤジディの宗教が生き残れたかどうかは…

 
 

世界の国はアメリカとそれ以外と覚えるだけでいいから地理の授業が楽になるな -- 2019-02-04 (月) 20:49:11

名無し2.png最終的には4ヵ国になるのですごく楽ですね。150ヵ国の知識は雑学マニアあたりだけで語り継がれるのでしょう。

 
 

まあ実際は、少しづつ独立させていく事になるんだろうね -- 2019-02-04 (月) 23:11:45

名無し2.png生体機械の脅威さえなければそんな感じだったと思います。

 
 

オランダ領東インドはモハマッド・ハッタが首相を務める民主的な自治領になってるんだね。それでもかつての英連邦諸国と同じように最終的にはオランダから完全独立するでしょうね。 -- 2019-02-06 (水) 14:52:06

名無し2.pngFullでは傀儡国扱いのニュージーランドも今では完全独立していますし。

 
 

何もかもガンギマリで草 -- 2019-02-15 (金) 15:44:38

名無し2.pngガンギマリじゃなきゃポリコレじゃないと思います。作者はポリコレに脳みそやられてる側の人間ですけど。

 
 

上がってたから改めて見直してみたら、デメリットアカだけが理由になってない。 -- 2019-02-11 (月) 00:39:15
つまりサンディカリストは実質的にデメリットがないんだよ!! -- 2019-02-11 (月) 08:46:11

名無し2.pngアメリカには無限の可能性があります。皆さまもぜひAARを書いてください(他力本願)

名無し2.pngもう4年ぐらい前の話になってしまいますが、同志書記長がKRアメリカAARを執筆する前にこのAARを始めてしまったことによって同志書記長の計画を潰すような形になってしまったことをこの場でお詫び申し上げます。本当に申し訳ございません。

 
 

On the other hand, it will be equally forgotten that the vigor of government is essential to the security of liberty; that, in the contemplation of a sound and well-informed judgment, their interest can never be separated; and that a dangerous ambition more often lurks behind the specious mask of zeal for the rights of the people than under the forbidden appearance of zeal for the firmness and efficiency of government. History will teach us that the former has been found a much more certain road to the introduction of despotism than the latter, and that of those men who have overturned the liberties of republics, the greatest number have begun their career by paying an obsequious court to the people; commencing demagogues, and ending tyrants.
The Federalist Papers Alexander Hamilton

政府の活力は自由の保障のために不可欠であること、確かな慎重な判断に従えば両者の利害は本来分離し得ないものであること、強固にして効率的な政府を熱望する一見厳しい外見よりも、むしろ人民の諸権利を標榜するもっともらしい仮面の陰に、かえって危険な野心が潜んでいることが、同じく忘れられるだろう。歴史は、前者が後者よりも専制を導入するためのはるかに確実な道を見いだしたこと、そして共和国の自由を覆した人々のうち、最も多くの人々が大衆迎合主義者として彼らの政治的経歴を始めたことを教えてくれる。 彼らは扇動者として始まり、暴君に終わる。
ザ・フェデラリスト・ペーパーズ アレクサンダー・ハミルトン

名無し2.png最後の引用にはこっちを使おうか悩みましたが一応大統領縛りということでルーズベルトから引用することにしました。

名無し2.png以前のコメントの要請に応え冒頭のフーヴァーの発言の出典もつけました。せっかくなので≪KRアメリカ太平洋諸州≫For the Republicの死んでいた画像を可能な限り復元しておきました。思ったより時間がとられてしまいましたね…

 
 

これが受容狂平等のUnited nations of Earthちゃんですか -- 2018-11-12 (月) 18:52:39

名無し2.png人類に対してはその通りです。しかしステラリス的にはこの国の国是は狂信的な排他主義かつ精神主義系統の「狂信的な浄化主義」だと思いますね。

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≪kaiserreichアメリカ合衆国≫星条旗よ永遠なれ


*1 ハーバート フーバー (著)、ジョージ・H. ナッシュ (編)、渡辺 惣樹 (訳)『裏切られた自由:(上)フーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症』草思社、2017年、57頁。
*2 一国多いのはリヒテンシュタインがいるだろうから
*3 ガリツィアを独立させそこなったのは単なるミス
*4 コメント/≪KRアメリカ太平洋諸州≫For the Republic参照。2016年2月の段階ではお笑い芸人扱いだったのに… ちなみにドナルド・トランプはかつて2000年の選挙では反差別的な立場を掲げていた。KR世界でもその時と同じように反差別的主張を掲げて大統領になってもおかしくないと判断
*5 実際彼の閣僚特性は権威主義。だが国家元首が権威主義的という理由で滅ぼしてしまうと国家元首に民主政治家がいないブータンや北ドイツ連邦をそもそも独立させられなくなる。最終的にこのAARではスペインも含めてまとめてなくなっているのでよしとした

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Last-modified: 2019-02-17 (日) 21:37:49 (31d)