KRフランス・コミューン シーシュポスの神話

カオス=ロゴス・ワールド

1938年の冬、カフェ・ド・パリにて

 
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Vox Populi(新聞紙)見出し
「アメリカ内戦勃発! 世界騒然す!」
「アメリカ義勇兵出立! ヴィヴ・ラ・フランス!」
「スペイン内戦勃発! 王国派、カルリスタ、CNT−FAI三つ巴の内戦!」
「イベリア・アナーキスト連盟、インターナショナル加盟を希望! 内戦介入か!?」
「ドイツ帝国の介入! スペイン内戦に新展開か!?」
 
 
内戦、介入、内戦、介入。
繰り返される行動、繰り返されるシーン。
新聞は穏健派から過激派まで、全ての紙面が国際情報とそれに纏わる情報ばかりになっている。
仕方のないことだ。国民全員がその情報を待ち望んでいるのだから。
 
 
平和主義者は戦争の終結を。
最大主義者は戦争の介入を。
牙なき者は頭を伏せて、牙あるものはそれを磨く。
世界は秩序を乱し、混沌なる論理が世界を支配しつつある。
 
 
この日、私は三人の人物と会談をする予定でいた。
 
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「さて、ようやく一人目が来た」
 
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その男は苦虫を噛み潰したような表情でもって、私に近付く。
 
サルトル.png なんだね。統合情報委員会長官殿?
 
カミュ.png ご挨拶だね。私がそもそも警察組織なんぞと言うものを真面目に運営するなんて、君は思っちゃいないだろう?
 
サルトル.png そうだねえ、アナーキストには警察を動かすだけの主体的思想などないのだから
 
カミュ.png お前の良くないのはそういうところだよ。なぁ、サルトル
 
 
この男が減らず口なのは常である。
彼の名前はジャン=ポール・サルトル。哲学者であり、作家であり、そして……BGTの孤児である。
彼の知識、その意識の高さは本物だ。少なくとも、哲学者としては超一流であり、実践家でもある。
しかし、この舌禍が災いして、どのような政治的派閥にも参画を許されない政界の孤児として、議会を漂っている。
 
 
「やあ。久しぶりだね、カミュ……もう一人は、初めまして、かな」

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カミュ.png やあ、アーネスト。アメリカでは銃弾を食ったと聞いたが、くたばりぞこなったらしいじゃないか!
 
ヘミングウェイ.png たかが銃弾程度で私を殺せると思わないことだ。私は平気だよ。航空機事故にでも遭わない限りはね。
 
カミュ.png 健康なのはいいことだ
 
 
アーネスト・ヘミングウェイ。
北米の左派文学者の代表でもあり、アメリカ内戦でも銃を手に取って戦った闘士だ。
第三インターナショナルにおいて彼のふるった演説は「ヘミングウェイ・スピーチ」と呼ばれ、高く評価されている。
いずれは北米の……否。アメリカ大陸を代表する作家となることであろう。
 
 
カミュ.png さて、最後の一人は一番の大物だ。その名は……
 
 
私がそれを言い切る前に、彼は来た。
黒いシャツを着た男達に囲まれながら、彼はこのカフェを訪れた。
むくつけき黒シャツの男達に守られて現れたその男は、面長で陰気な雰囲気を漂わせている。
しかしその背筋は真っ直ぐに伸びており、黒シャツの男達は彼を畏怖していた。
 
 
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カミュ.png 来たね。この会合最大の大物。オズワルド・モズレー親衛隊隊長、エリック・ブレア……またの名を
 
オーウェル.png ジョージ・オーウェル
 
 
かくして男達は集結した。
 

カフェ・ド・パリの密約

 
サルトル.png ……さて、何故私達はこのパリの小さなカフェにお呼ばれしたのだろうね。お茶会か?
 
ヘミングウェイ.png ここはカクテルはないのかね?
 
オーウェル.png ……
 
カミュ.png お茶会ね、お茶会……まあ、間違いじゃないさ
 
サルトル.png くだらん。私は帰るぞ!
 
カミュ.png 落ち着けよ、サルトル坊や
 
ヘミングウェイ.png 実際、この集まりの目的はなんだね。私だって暇じゃないんだ
 
オーウェル.png ……
 
 
 
カミュ.png 話は単純だ。私は諸君らと、密約を結びたいのだ
 
サルトル.png 密約?
 
カミュ.png そう、密約だ。我々はある目的のために相互に連携し合い、不条理に立ち向かい、より良い未来を作り上げるのだ
 
ヘミングウェイ.png "より良い未来"、ね……
 
オーウェル.png ……
 
カミュ.png 我々はインターナショナルに加盟するサンディカリズム諸国において、独裁者共を抑え込み、自由主義の命脈を保ち続けるのだ。
 
オーウェル.png ……!
 
サルトル、ヘミングウェイの二人は絶句した。ただ一人、オーウェルだけが興味深いと言わんばかりにカミュを見る。
 
ヘミングウェイ.png 成る程、自由主義ねえ。悪くない……一人、異物が混じっている気がするけどな
 
サルトル.png ああ、全くだ。全くその通りだ……なぁ?
 
 
ヘミングウェイとサルトルはある男の方を見た。
その男、ジョージ・オーウェルは一切動揺せず、カミュを見据え、言った。
 
 
オーウェル.png ……君は、私を自由主義の信奉者だとお思いか?
 
カミュは事も無げに答える。
 
カミュ.png ああ、そうだとも。モズレー親衛隊『黒シャツ』隊長、エリック・ブレア閣下
 
オーウェル.png 閣下はよしてくれ。柄じゃない……おい、お前達
 
黒シャツの男達に緊張が走る。
 
オーウェル.png 一度、お前達は外に出ろ。いいな?
 
黒シャツの男達は店を出た。
 
オーウェル.png さて……"同志アルベール・カミュ"。お前は一体何処でそれに気が付いた?
 
カミュ.png 『ビルマの日々』を読んだよ。ただそれだけさ。我々文学者はそれだけで察せなければいけない
 
オーウェル.png 成る程なあ。若いのに立派なもんだね……内容は、どうかね
 
カミュ.png 陰気ですね
 
オーウェル.png 率直に物を言うんだね、君は!
 
カミュ.png けれども、あなたが帝国主義を蔑んでいるということだけは分かった。しかし、分からないのは……何故あなたのような人が"あの"モズレーの親衛隊なんぞに入ったのか、ですよ
 
 
ジョージ・オーウェルは少々考える様子を見せ、少し経った後にそれを話し出した。
 
 
オーウェル.png 成り行きだよ。戦闘の出来る者を彼は求めていた。それに応じた。そうしたらいつの間にか隊長様さ。
 
サルトル.png 成り行きなんぞであの狂人の護衛が出来るのか。それは実に興味深い話だね
 
オーウェル.png 何とでも言えばいい……実のところ、私だって自分の立ち位置がよく分からん。それでも私はこの場所に居る
 
カミュ.png "不条理"だ
 
オーウェル.png その通り! 正しく不条理だ。けれども我々は生きていかなきゃならんのだ!
 
 
オーウェルは笑った。
ヘミングウェイも微笑んでいる。
サルトルのみが怪しいものを見る目でオーウェルを見る。
 
 
カミュ.png ではここに、男達四人で密約を結ぼう。
 1、我々は独裁政治にNOを突き付け、極力それに抗う。
 2、我々はインターナショナルの中にあって、自由民主主義と民族の自由を保障する。
 3、この密約は外に漏らさないこと
 以上だ。如何かね? 諸君。
 
ヘミングウェイ.png 悪くないね。
 
サルトル.png 私なんぞに、何が出来るのだ
 
カミュ.png ……いずれ時代が君を必要とするさ。"俺が保障してやる"
 
 
オーウェル.png 懐かしいね。子供時代の約束のようだ
 
ヘミングウェイ.png 約束を破るなら、死を願い、自分の目に針を刺せ(Cross my heart and hope to die, stick a needle in my eye.)
 
そう言って、ヘミングウェイは笑った。オーウェルも笑っている。
 

最初の人間

 
こうしている間にも、世界は進み続けている。
フランス・コミューン陸軍においては「革命戦争後初の歩兵部隊」が生み出された。
スペインにおいてはカルリスタスペインを破り、スペインを分割した。
 
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"最初の人間"はこうして歩み始めた。
歴史という大いなる潮流の中で、彼らは一体どれだけの力を行使出来るのであろうか……?
 
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Last-modified: 2019-06-19 (水) 16:32:27 (28d)